■仮想敵国が3つになった日本、対策は日米同盟と防衛力強化 将来的に「NATO加盟」検討を
12月8日は真珠湾攻撃の日だ。戦争する確率を減らすためには何が必要だろうか。
国際政治学では、平和達成について
①同盟と
②防衛力から説明する「リアリズム」の立場と
③民主化
④経済依存度
⑤国際機関主義から説明する「リベラリズム」がある。
なお、③は哲学者カントが唱えていたことで、民主的平和論として知られている。
両者の立場は対立しない。ブルース・ラセット(エール大)とジョン・オニール(アラバマ大)は、膨大な戦争データから、「民主主義国家同士は、まれにしか戦争しない」ことを実証し、2001年出版の〝Triangulating Peace〟という本で、2つの立場をまとめている。
同書では、1886年から1992年までの戦争データについて、リアリズムとリベラリズムのすべての要素を取り入れて実証分析がなされている。それぞれ戦争確率を低下させることがわかっている。
ちなみに現在のウクライナ危機をみると
①ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟していなかったこと
②ロシアとウクライナの軍事アンバランスがあったこと
③ロシアが非民主主義国家であったことが特徴的だ。
一方、最近は経済安全保障の考えから、④は必ずしも望ましくない。さらに、国連安全保障理事会はウクライナ危機で全く機能していないので⑤国際機関主義も説得力を欠いている。
わが国の周りを見ると、中国、ロシアと北朝鮮という非民主主義国が隣国となっており、危険な地域だ。③の民主主義については、両方ともに民主主義国だとめったに戦争しないという意味で、古典的な民主的平和論が正しい。一方の国が非民主主義だと戦争のリスクは高まり、双方ともに非民主主義国なら、戦争のリスクはさらに高まる。
中国、ロシアと北朝鮮が民主主義国家になってくれれば、日本の安全保障は格段に良くなるが、それは国の体制崩壊を意味するので、全く期待できない。w
となると、日本としてできることは、①と②だ。①は当面は日米同盟の強化で、将来的にはNATO加盟だ。長く中立政策をとってきたフィンランドやスウェーデンもNATO加盟に動いているので、同盟強化は間違いない方向だ。数年前、同盟の前提である集団的自衛権について反対していた勢力もあったが、今はダンマリだ。w
もっとも、ウクライナ危機でわかるのは、米国は支援をするが、自国の兵士を犠牲にしてまで助けてくれないという冷酷な事実だ。まずは自国で防衛しないといけない。
そこで、やはり②防衛力という基本になる。非民主主義国の軍事費の実態は明らかではないが、かつては仮想敵国1国で防衛費は国内総生産(GDP)比1%だった。NATO基準はGDP比2%であるが、今や仮想敵国は3つあるわけだから、3%でもまったく不思議ではない。NATOという世界最強の同盟で、2%なので、日米同盟だけの日本ではそれ以上の防衛力が必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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